崩れるひとみがわたしへと振り返る、
彼女のひらいた口もとに
呻めいていた
瘧り
/思い出すことのできない破裂音の
崩れる言葉でわたしを定めようとする。
きみは何を視たのか エンノイアよ
何故、わたしへと脅えるのか、きみは知らない
すがりつく手首に蒼い脈動がはち切れそうに浮かんでいた
打ち寄せる問いで からだをいっぱいにしながら
きみはわたしを掴んだまま 海に墜ちてしまう
もうあのとき きみは亡骸だったのか
エンノイアよ 答えておくれ
きみはわたしを見失い
厳冬の海のしわぶきと白いかもめに
形跡も無く食べられてしまったのか
きみはわたしを見失い
わたしがきみを喪う刹那に
わたしに何を見定めたのか
きみは夜に拡がる エンノイアよ
果てしない闇空をつややかなひとみにして
きみのまなざしが宇宙を呑みこむ
満点の星座から銀の視線がわたしへと降り注ぐ
きみはわたしを眺めている エンノイアよ
わたしはきみの
最央にいる 夢見られているのだ
死んだのではなかったのだね エンノイアよ
エンノイアよ 答えておくれ
夜道を何処までもきみを捜し
尋ねて歩くわたしに現われておくれ
きみは彼方で瞼を閉じ わたしの夢を見続けている(のか)